ジャズの扉を叩こう!
−ジャズという素晴らしい音楽 入門編−


第5回
BY 公子王孫
アドリブソロ その5

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[4] ジョン・コルトレーン『ブルー・トレイン』(1957年)
John Coltrnae Blue Train (Blue Note)


ジョン・コルトレーン (ts)
リー・モーガン (tp)
カーティス・フラー (tb)
ポール・チェンバース (b)
ケニー・ドリュー (p)
フィリー・ジョー・ジョーンズ (ds)

1957年9月15日録音
1. ブルー・トレイン
2. モーメンツ・ノーティス
3. ロコモーション
4. アイム・オールド・ファッションド
5. レイジー・バード


 ジョン・コルトレーンは、[1]のソニー・ロリンズと並ぶテナーサックス奏者の最高峰です。このアルバムの編成は、リズムセクションのピアノ、ベース、ドラムス以外に、コルトレーンのテナーサックス、トランペット、トロンボーンがフロントにいる「セクステット」です。タイトル曲「ブルー・トレイン」を聴いてください。

「ジャズを聴くと元気になる」とはよく言われることです。即興演奏というのは、その場で作曲しながら演奏するという離れ業ですから、気分的高揚と冷静さと集中力と感受性と、とにかく全神経・全身体を総動員して臨まなければできないだろうということは想像できます。そのことが聴き手にも伝わるので、元気になるのだと思います。
 一方で、演奏に集中するあまり、聴き手に対するサービス精神が欠けているのもジャズです。演奏をやるだけやって、後はおまえらで勝手に理解しろというクールな態度です。しかしほんとうは、ジャズミュージシャンが聴き手を意識しないはずがありません。
 僕は、彼らは聴き手に対して楽しませようとか喜ばせようとしているのではなく、勝負を挑んでいるのだと思います。勝負と言っても戦うわけではなく、ミュージシャンの「どや」を受け止めて、聴き手が「やるじゃねぇか」と返せるかどうかという意味です。
 このことは、聴き手を楽しませようとしている音楽を聴き慣れた人にはなかなか受け入れ難いかもしれませんが、両足ふんばって受けて立てば、ミュージシャンの高揚した気分とシンクロする感覚が得られます。これはものすごい興奮と感動をもたらします。

 ミュージシャンが聴き手に勝負を挑んでいることが最もわかりやすいのが「ブルー・トレイン」です。どのアドリブソロも、聴き手にぐいぐいと迫ってくる名演です。
 36秒辺りから始まるコルトレーンのアドリブソロも良いですが、3分24秒からの、「ジャズ界一の不良少年」リー・モーガンのトランペットのアドリブソロに特に注目してください。これほどミュージシャンの「どや顔」が浮かぶ演奏もありません。
 リー・モーガンも[1]のソニー・ロリンズと同様、先読み型のミュージシャンですが、後の盛り上がりを予感させるアドリブソロへのもったいぶった入り方が、小憎らしいほどカッコいい!

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